2024年8月からEIL高校生交換留学フランス派遣プログラムに参加している田中遥さん。今回、ご自身の留学体験を多くの方と共有したいと、レポートを書いてくれました。
留学生活も5か月目に入り留学期間も残り半年となりました。これまでの体験を振り返って経験談を書いてくれました。ぜひお楽しみください!
私の留学生活も早くも5か月目を迎えました。留学は楽しいことばかりではないとわかっていても、想像以上に多くの困難や試練に出会い、自分の弱さに気づきました。しかし、その分日常での些細な幸せや小さな成長が特別なものに感じ、ホストファミリーや友達の支えのおかげで充実した日々を過ごせて、あっという間にここまで来たような感覚です。今回は、いくつかのカテゴリーに分けて、これまでの体験をお話ししたいと思います。
ホストファミリー
まずは、ホストファミリーについてです。私のホストファミリーは、温かくいつも私を支えてくれる存在です。ホストファザーは、冗談が好きな人でいつも食卓を和ませてくれます。ホストマザーは、周りを照らすような明るさをもつ人でコーディネーターとしても様々な人との交流の場を設けてくれます。ホストシスターは、日本のアニメが好きでこちらが驚くような日本語をよく私に披露してくれます。また、ホストファザーとシスターは英語に堪能で、2人のサポートのおかげではじめから何とか会話をすることができ、また今でも助けてくれるためとても心強いです。このように、優しい彼らを私もすぐ好きになりました。
しかし、日本語も話せていた語学研修から一転、突然知り合いもいない、日本語も話せない環境に身をおくことになると、自分でも驚くほど大きな不安と孤独感が私を襲いました。ですが、当初、私はその気持ちに蓋をし気づかないふりをしていました。今、振り返ってみると、それはとても無駄な行為でなぜもっと早くホストファミリーに相談しなかったのかと自分でも思うほどです。しかし、それは私がホームシックに対して持っていた、誤ったイメージのせいで起こったことだといえます。私はそれまでホームシックは心が弱い人がなるもので、一人行動も好きな私には無関係なものだと考えていました。だから、平静なフリを装い、早く聞き取れるようになろう、早く話せるようになったら何も問題はないと思っていました。しかし、その思いとは裏腹に語学力の向上どころか、楽しいはずの会話の途中もどこか心は別のところにあって目の前のことを何も楽しめなくなっていました。そして、ある日、ホストマザーが遊園地に連れていってくれたとき、ふと日本の家族のことを思い出して涙が溢れ出しました。しばらくの間何も言えず、やっと「ホームシックかもしれない…」とだけ伝えた時、ホストマザーはそれは普通のことだと教えてくれて、私が泣き止むまで静かに寄り添ってくれました。その晩、家族全員で話し合い、「自分の気持ちを直接伝えてほしい」と言われてからは何でもホストファミリーに相談するようにしていきました。その日、すぐに気持ちを切り替えられたわけではありませんが、確かに自分の気持ちと素直に向き合うきっかけになりました。この経験から、私は”家族”という存在のありがたみと心身共に健康であることの大切さを学びました。その後も、何か問題が起こっても、ホストファミリーと全員で話し合い解決してきたことで、今では彼らのことを本当の家族のように思えるようになりました。
学校生活
次に、学校生活についてです。私のホストスクールは遅い時は18時半まで授業があり、まずはこの生活に慣れることが大変でした。それに加え、授業のスタイルも日本の高校とはまったく違い、大学のように自分の選択したものを受けていくのですが、先生は基本板書をメモ程度にしかせず、生徒それぞれが自分たちで先生の話をノートにまとめていく形なので、はじめは授業の内容を何も理解できませんでした。しかし、幸いなことに各教科の先生に私が留学生であることを伝えると、授業中の翻訳機使用の許可をいただけたので、いつでもわからない単語を調べることができ、とても助かっています。そして、これのおかげで単語帳だけで勉強していた時に比べて、語彙の幅だけでなく覚えるスピードも格段に上がりました。現在も、授業の内容を全て理解できるようになったわけではありませんが、確かに理解できる部分は増えていると実感できるので、これからも新しく知識が増えると楽しみながら継続していきたいと思います。
また、人間関係においても中々思ったようには行動できないことがたくさんありました。私は日本にいた時から社交的な方ではなかったのですが、だからこそ留学先ではもっと積極的な人になろうと決意していました。しかし、いざ学校に通い始めると、会話に入れてもらっても授業の方が簡単に感じるほどついていくのは難しく、始めから楽しそうに会話ができていたドイツからの留学生の子たちと自分をどうしても比べてしまいました。4年前からフランス語を学んでいた彼女らと自分を比べても仕方がないとわかっていても、ドイツ語も話せていつも2人で行動している彼女らを見て焦ることもありました。けれど、クラスメイトの交友関係の広い子と仲良くなってからは彼女を通じて、たくさんの人に出会い話ができるようになりました。そして、会話を重ねていくなかで気づいたのは、わからないことがあったらためらわずに尋ねることの大切さです。わからないままにするのではなく、会話の中でも友達にフランス語を教えてもらうことで少しずつ理解できるようになってきました。私が想像していたよりも、フランスは英語を話せる学生が多く、私が質問をしたら英語をまじえながらいつもわかりやすく説明してくれます。また、最近では週に1回みんなでカフェに行く習慣ができ、学校の休み時間だけでは足りない分もそこでたくさん話をしています。フランスの文化だけでなく、他の留学生の国のことも知れ、また日本の文化を伝えられる良い文化交流の場となっています。このようにして、当初他の留学生と自分を比べて不安だった時とは異なり、今は自分のペースで楽しく学校生活を送れています。しかし、まだ話せていない人も多いので、挨拶だけで終わらないように、これからはもっと積極的に話しかけていきたいと思います。
習い事
続いては、習い事についてです。1つ目は、語学学校です。もともと帰国直前にフランス語の資格試験であるDELFを受けるつもりだったので、それをホストマザーに相談したところ、語学学校に通うことを勧めてくれました。レッスンは週に2回、放課後の1時間半のコースに通っているのですが、本当に始めてよかったなと感じています。先生とマンツーマンの授業なので、学校の授業でわからなかったことだけでなく、自学中に生まれた疑問を遠慮なく聞け、自分でも成長を日々実感できます。また、発音も丁寧に指導してくださるので自信を持って発言することができ、ホストファミリーも「日に日に上達しているね」と認めてくれています。これからは、いよいよDELFに特化した授業が始まるので、より意欲的に取り組んでいきたいと思います。
2つ目は、バレエです。学校生活にも慣れ、何か習い事を始めたいと思い、毎週土曜日の1時間半のレッスンに通い始めました。バレエの動きは全世界共通でフランス語が使われているので、言葉の心配をする必要もなく、とても良いリフレッシュになっています。また、日本の教室との違いをを知ったり交友関係が広がったりする機会も得られたので良かったです。さらに、自分の習い事だけでなくホストファミリーの趣味である、乗馬のコミュニティのイベントなどにも参加したことで、新しい世界を知ることができました。これからも、ホストファミリーと趣味や時間を共有することを大切にしていきたいと思います。
文化交流
最後に、文化交流についてです。この4カ月間だけでも、フランスの多くの文化を学び、体験することができました。そして、同じだけ日本の文化を伝えるために調べる過程で、私自身も日本について新しく学ぶことがたくさんありました。はじめのうちは会話についていくのが難しかったため、日本のお菓子や5円玉、折り紙などを用意し、事前に説明も考えていました。この時に限らず、地理や歴史の授業でも先生に話をふられることは今でも多々あるので、日本人として正しい情報を伝えるためにも、これからも日本のニュースや文化についての記事を継続して読んでいこうと思います。これらに加え、最近は日本語はフランスをはじめとした他の国の人にとって、とても特殊で興味深く映るものだと気づいたので、名前を漢字とひらがなで書くようなものもつくり、誕生日プレゼントや新しく出会う人へのお土産として渡しています。さらに、現在は会話の内容も理解できるようになってきたので、食べ物や授業、音楽、映画などの何気ないトピックでも、積極的に日本のことを伝えられるようになりました。また、料理については留学前に数品習得しておいて本当に良かったです。ホストファミリーの仕事の都合で、違うお家で面倒を見てもらうことも多々あったのですが、お礼の気持ちも込めて日本の料理を振る舞うとみんなとても喜んでくれました。仲を深めるきっかけにもなるので、これからはもっと定期的に作っていきたいです。
このように、様々な体験をしてきたなかで気づいたのは“常に感謝の気持ちを持つこと”の大切さです。これからも、楽しいことだけでなく、大変なことにも多く直面すると思います。しかし、これまでも困難にあうたびくじけそうになりながらもそれを乗り越え、また素晴らしい時間を過ごせたのは、全てホストファミリーをはじめとして学校の友達、EILのスタッフさん方、そして日本の家族の支えがあったからだと今強く実感しています。特に、それはホームシックになったからこそ、気づけたことだと思います。当時は、自分の気持ちだけで頭がいっぱいでとても自分だけでは解決出来なかったところを、日本の家族からの仕送りやメッセージ、そして何よりもホストファミリーからの励ましがあったからこそ再び前を向けました。だから、今振り返ってみると、ホームシックも今までどれだけ自分が家族に甘えていたかということを教えてくれた上に、自分を強く成長させてくれた、価値あるものだと感じることができます。”留学は当たり前に与えられた環境ではない”という意識を常に持ち、これからも人として更に成長できるように努めていきます。
(写真、文:2024年フランス派遣生 田中遙)
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