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【高校生交換留学体験談】H.T.さん(南アフリカ派遣)最終回

更新日:11月15日

 EIL高校生交換留学プログラムの2021年冬派遣プログラムは、新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、原則としてすべて中止となりましたが、一部プログラム参加の強い希望をいただいた生徒については、派遣先国の状況も見ながらプログラムを催行しています。  そのうちのお1人が南アフリカ派遣のH.T.さんです。Hさんは交換留学プログラムの参加を強く希望し、留学に行くからには生活の様子が想像がつかないような、馴染みのない国に行きたいと、南アフリカを志望しました。


 8カ月の留学生活(Hさんは元々8か月留学プランで留学されています)を終え、先日帰国したHさん。帰国直前をどのように過ごしたのか、そして帰国した今、どのように感じているのかについて書いてくれました。

 

 南アフリカ・ケープタウン留学体験談、最終回です。8月25日に8ヶ月弱のケープタウンでの留学が終わり、現在は東京の隔離施設(ホテル)で3日間の隔離生活を送っています。先月の南アフリカはレベル4ロックダウンもあり、制限の多い生活でしたが、今月はレベル3に下がり、学校は再開、ランニングとハイキングも少人数ですが再開することができました。

 留学体験談の最終回として、新しいsisterとの話、誕生日の話、帰国の話などを書きました。


ホストファミリーと本当のファミリーになるために

 7月上旬に1月からダブルプレースメントで一緒に暮らしていたイタリア人のSofiaが帰国し、7月中旬からは同じくイタリア人のJasminaと一緒に生活をしています。人は一人一人違うので、初めの数日はもちろん戸惑いもありましたが、私たち3人の新しい形を少しずつ築けていると思います。

 1つ問題になったのは、Jasminaはベジタリアンでお肉も魚も食べないということ。それに加えて、彼女は甘いお菓子や脂肪分が高いものも食べません。けれど、南アフリカ料理のほとんど全てにお肉が使われており、多くの家庭は毎日お肉を食べます。また、私のステイ先での週末の夕食の基本は、Braai (バーベキュー)をした後に甘い甘いデザートを食べること!彼女が私たちの家にきて、最初の食事をするまで、私たちは彼女がベジタリアンだということを知らず、何も準備をしていなかったため、(ホストマザーも私もベジタリアンの人に初めて出会った)戸惑いがありました。

 また、彼女は静かな性格で、部屋でイタリアの家族と話していることが多く、彼女の性格やどう関係を築いていくべきなのか分かりませんでした。初めの1週間はホストマザーもまだチャンスをあげると言って、何も言葉を伝えていませんでしたが、その後3人でリビングに座り話をしました。

 話した結果お互いの誤解が解け、変に気を使わなくなり、今はいい関係が築けています。私はこの時改めて、ホストマザーと一緒に暮らすことができてよかったな、と思いました。私のホストマザーは、何に対してもオープンな視点と意見を持ち、すれ違いを会話を通して一つずつ解決していくことが自然にできる人です。彼女から学んだことは数え切れません。また、この経験を通して、母国の家族と連絡を取りすぎない、というルールを留学団体が私たちに出す本当の理由が分かった気がしました。

 ケープタウンに来た初期の頃は、英語で自分の思いを伝えることが難しく、その日学校であったことや今の自分の思いなどを日本の家族に共有したい!と思うことがありました。でも、出発前オリエンテーションの時に聞いた話を思い出し、日本の家族に共有するのをやめ、崩れた英語でしたが、ホストファミリーに細かい自分の思いや感じたことを共有することを始めました。その結果、今得れたものは、留学前に母とやっていたのと同じことを、ホストマザーとしている、ということです。学校から帰ってその日お互いがしたことをコーヒーとおやつを食べながら話したり、将来について相談したり、テレビを見てただ一緒に笑ったり、その時感じた感情をそのままホストファミリーにシェアすることで、もっと本当の家族になれた気がします。私は最初の1週間、Jasmina がイタリアの家族とばかり話しているのを見て、「彼女は私たちのことを家族だと思ってないのではないか」などという感情が生まれました。きっと自分の思いを共有しないと、このような感情が大きくなり、すれ違っていってしまうのだと考えます。

 私の場合、留学をスタートして1ヶ月ほど経った後、「共有したい!」という感情はホストファミリーに対して全てぶつけられるようになり、日本の家族とは必要事項だけを連絡するようになりました。母国の家族と定期的に連絡を取ることももちろん大切ですが、ホストファミリーともっと距離を近づけるためには、母国の家族との連絡を控え、その時感じた感情を直接ホストファミリーに対して伝えることが大切で、それをした結果、もっと家族になれるのではないかなと考えます。


Jasminaと

2つの誕生日

 8月23日に私は誕生日を迎え、18歳になりました。もう自分が18歳ということに驚きが隠せません・・・。自分のやりたいことに常にアンテナを張り、地に足をつけながら、やれることは全て挑戦していく18歳にしたいです!

 今年の8月23日は例年よりも特別なものでした。その理由の1つは、この日はホストマザーの誕生日でもあるということです!たまたまの巡り合わせでお母さんになった人と同じ日に生まれたことに何か縁を感じます。

 夕食にはホストマザーのお兄さんの家族を招待して、バースデーディナーをしました。私が誕生日の夕食に選んだものは、南アフリカ料理のGATSBY。GATSBYとは特大サンドウィッチのような食べ物で、大きなパンの中にポテト、チキン、レタス、トマト、など、とにかくなんでも入っており、通常4人〜6人でシェアをして食べます。

 この日、ホストマザーの娘さんが彼女のFacebookに1つの投稿をしていました。その内容がとても嬉しかったのでシェアさせていただきます。




 娘さんはベトナムで英語の先生をしており、一度も対面で会ったことはありません。けれど、数ヶ月前は他人だった人と、ここまで特別な関係になれることは素敵なことだなと思いました。


ホストマザーと私のバースデーケーキ

 また、この日は帰国を間近に控えた私にとって最後の登校日でもあり、友達が誕生日と最終日を兼ねて盛大にお祝いしてくれました。日本からも南アの方からも本当に多くのメッセージをもらい、改めて自分がどれだけの人に支えられているのかに気づき、またそんな素敵な人たちとの出会いにキュンとした特別な1日になりました。

 私の好きな言葉の1つに” see you somewhere in the world” という言葉があります。私たちの若さと可能性を表している言葉だなと思い、お別れをいう際はこの言葉を使うようにしています。

友達たちが開いてくれた誕生日パーティーで

ラストラン!!

 留学中に一緒に走っていたランニングチーム、HIIT SQUADとのラストランではハーフマラソンを走りました。コースは街の中心にあるケープタウン駅から始まり観光名所を通るコースを使い、とても素敵なラストランになりました。

 先月はコロナの影響でチームでのトレーニングができなかったため、各自家でトレーニングをしていました。私はコロナの感染や自主トレーニングをサボってしまったこともあり、この日のハーフマラソンまでに体をベストな状態に持っていくことはできませんでした。毎日継続して体を動かす大切さとを痛感させられました・・・。

 私は中学までは陸上競技をやっていましたが、高校生になってからは全くと言っていいほど走っていませんでした。この留学を通して、期待をしていなかった形で、また走ることができてとても嬉しく思っています。帰国後もできる範囲でランニングを続け、体力のあるうちにフルマラソンにも挑戦してみたいです!コロナが収束したら、クラブの人と一緒にどこかに旅行して、その先で観光しながらマラソンができたら素敵だな、などと考えています。


 「コロナがなかったらもっとできたこともあったのではないか」と考えることもありますが、私はこの時期に留学をしたことに何一つ後悔はありません。

 大人数で話すことが得意でない私にとって、きっと少人数でしか集まれないこの環境はいい方に動きましたし、1ヶ月どこにも行けずホストマザーの横で暮らしたことで、もっと彼女のことを近い存在に感じることができましたし、何よりこのクラブにも出会うことができました。

 このクラブから学んだ一番のことは、人生に大切なことは「信頼」と「尊敬」だということ!年下の人でも、ホームレスの人でも、過去に何かあった人にも、信頼と尊敬は忘れてはいけません。そして身近にいる人への感謝、日本語でいう「親しき中にも礼儀あり」の大切さ、素敵さを改めて感じました。

ハーフマラソンのスタート前

もう1つのホストファミリー

 留学先での正式なホストファミリーは一家族ですが、私は他にもホストファミリーがいる気がします。私のホストマザーはコロナや年齢的なことから常に家にいて、一度も一緒に外出をしたことがなく、私が外出する際には学校の友人とその家族やランニングとハイキングであった家族と出かけていました。

 ケープタウンでは年上の方を呼ぶ際に、男性なら名前の前に「Uncle」、女性なら「Aunty」をつけて呼びます。私はこの留学を通して数えきれないほどのUncleとAuntyに出会うことができました。みんなが健康でいられるうちに必ずケープタウンにまた戻りたいです。


 帰国の際には、一番距離が近かった友人家族も空港まで見送りに来てくれました。ここで嬉しかったことは、ホストマザーと友人家族間にも新たな関係性が生まれたことです。

 帰国後、ホストマザーと電話した際に、友人家族から「Hが帰国をした後も、あなたは私たちの家族の一員で、何か助けが必要な時や寂しい時はいつでも私たちを頼ってね」という内容のメッセージが届いたと聞きました。

 ホストマザーはこの2ヶ月で近い親戚や友人を何人も亡くし、難しい時間を過ごしています。「1人で家にいると涙が出てきてしまう」と彼女も言っており、私が彼女に何ができるか分からないけれど、もし隣にいられれば何かできることが1つくらいあったはず、と強く思い、この時期に帰国しないといけないことがとても悲しく、また不安に思っていました。

 ホストマザーの親戚や友人も多く近所に住んでいますが、私も常に連絡が取れ、心から信頼できる人たちホストマザーのことを気にかけてくれていると思うと、安心した気持ちになりました。


空港で ホストファミリーと友人家族

帰国、隔離

 8月25日にケープタウンを離れ、日本に帰国しました。帰国の際には昨年の10月からケープタウンにいた他の日本人の留学生と一緒に帰国しました。ドイツ経由での帰国だったので、フランクフルトでは12時間の待ち時間がありました。

 待ち時間の間には、その留学生の子と留学体験を共有して時間を過ごし、学びの多い時間でした。ケープタウンは小さな町で車で15分でどこでも行けるので、多くの留学生が近くに住んでいますが、彼女と私は特に近くに住んでいて、さらに学年は違いますが、同じ高校にも通っていました。しかし、話をしていると、お互いの経験は全く違うものでした。見た景色や食べた料理、感じた感情など、思っていた以上に違うことが多く、改めて私の経験したことは他の誰にもできないことで、彼女のした留学も他の誰にもできないことで、留学体験は一人一人違うものだなと実感しました。

 今後私は、自分のケープタウンでの経験を人に伝える機会が多くあると思います。伝える時は、「あくまでこの話は私がケープタウンで見たこと、感じたことで、これを全てだと思わないでほしい」ということを伝えることも忘れずにいたいです。

 羽田空港に到着した後は、コロナに関する書類やアプリのサインやダウンロード、コロナの検査などをしました。空港の端から端まで大荷物と共に移動をしながらブースを回っていき、思っていた以上に大変でした。

 指定された私の隔離施設は両国のホテルです。期待以上にきれいな場所で、38階の私の部屋からはスカイツリーも見えます!お風呂も電気ポットも冷蔵庫も机もテレビもあって、とても過ごしやすい空間です。

 隔離期間は3日間で、そこで陰性であれば家に帰ることができますが、公共交通機関は14日目以降でないと使えません。私は神奈川県出身なので、3日間の隔離の後は家族が迎えに来てくれて、直接家に帰ることができますが、もう1人の派遣生は地方出身ということもあり、まだ家に帰ることはできません。帰国後の隔離措置はコロナ禍の帰国ならではで、大変だな感じています。


留学を振り返って

 この8ヶ月弱の留学はあっという間で、本当に素晴らしい経験でした。空港からホテルまでのバスで外の景色を見ていると、自分がケープタウンから帰ってきた実感がなく「この8ヶ月素晴らしい夢を見ていたみたいだな」と考えていました。

 ホストファミリー、ダブルプレースメントをした2人のイタリア人、学校の先生、クラスメイト、外部のクラブで出会った人たち、受入団体の方、学校のシステム、街の雰囲気、食べ物、景色、地形・・・。私の周りにいてくれた人、私の周りにあってくれた物全てが素晴らしく、心から大好きと言えます。

 支えてくれる人がたくさんいて一度もホームシックになったことはありませんでした。ご飯が美味しすぎて、一度も日本食が恋しいと思ったことはありませんでした。ランニングとハイキングも週に何度もやっていたので、太りすぎることもありませんでした。治安の良いとは言い難いケープタウンでも危ない目にあったことも、差別を受けたことも一度もありませんでした。

 他の留学体験者の経験談を聞いていると、彼らの多くが、辛いことを乗り越えて、その後楽しくなったと言っていたので、もしかしたら、私は辛い山を乗り越える前に帰ってきてしまったのではないか、と逆に少し不安になることもあります。でも、私が得た物を大切に、今後、この貴重な留学経験を無駄にしないように、出逢いを大切に生きていきたいです。


ホストマザーと

(文章・写真 2021年南アフリカ派遣H.T.さん)



 

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